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月日は流れ、二年ほどたった。
もはや世間はアンニュイ・エクレアのことなど忘れ、夏木ユウコのことを純粋に女優として見ていた。
「お疲れ様です、一旦休憩でーす」
「楽屋に差し入れ置いてますので、良かったら召し上がってくださいね」
撮影のピンと張り詰めた空気が緩む中、若いスタッフたちが親切にユウコへ声をかけていた。
「ありがとう、すこし休んでくるわね」
今日もドラマの撮影を終えたユウコは楽屋へ入っていった。
それを見送ったスタッフたちは、ユウコのことを話していた。
「いやぁユウコさん、今日も良かったですね、最近ますます演技に磨きがかかっているよ」
「少し前までは元気なだけの女性だった気がするんだけどね。いまは、演技にも表情にも陰りがあるっていうか、ミステリアスというか」
「もともと美人だったしね。でもあんなに若いのに、どうやってベテランみたいな、くすんだ演技ができるようになったんだろう」
若いスタッフたちに混ざって、業界経験の長いカメラマンも話に入ってきた。
「僕は昔、CMとかやってるときからユウコちゃんを撮ってるけどね。確かに昔とは印象がだいぶ変わったよ。ここ二年くらいCMとかで見なくなって心配したけど、女優になって、イキイキとしているのが伝わってきて嬉しいよ」
さらにベテランのスタッフも話に入ってきた。
「ほんとですね。ユウコちゃん、なんというか女優としてこんなに化けるとは思わなかったですよ」
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