東京の日々

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要するに、こういうカラクリだ。 俺の命を狙おうと怨霊が襲ってくる。 すると先祖たちが命を守ろうとする。 俺が死ぬ代わりに誰かしらが命を落としてしまう。 もうそんなことはどうでもいいのに。 先祖たちは必死になっている。 俺は兄の死から19年間を生きて29歳になった。 それだけでも長生きをしたほうだし、命を惜しくも思わない。 そんな俺の意思とは無関係に、怨霊と先祖は闘っているのだ。 馬鹿馬鹿しい。 死は死なのだ。 兄は父を包丁で刺し殺し、父の書斎に火をつけて、自身も山で腹部を 包丁で刺しながら、崖へと転落死した。 自殺だった。 母は同日に自分の左手首を斧で切断して出血多量を起こした。 これも自殺だった。 4人家族で3人とも同じ命日。 俺もいずれは死んでいく。 それがすべてだ。
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