東京の日々

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「あはははっ!ミカゲの几帳面な焼き方、久しぶりに見たよ!」 セキが笑って言ってきた。 「なんだって?」 豚玉の細長い数本の豚肉を割り箸で丁寧に真っすぐに並べながら 俺はセキをにらみつけた。 「実家でプレートでお好み焼きを焼いたとき、やってたよな。 豚肉をグチャグチャにせずに、ちゃんと真っすぐにした。 箸を使って真剣な顔でやってた。なにやってんだって笑えたよ」 「なんだよ、なんなんだよ、おまえ......」 「は?」 不穏になろうとしている俺たちとは別の意味で隣も不穏だ。 「ちょっと、お客さん、それひっくり返さないと焦げるよ」 と、店主が声をかけるほどに2人の男は、お好み焼きを放置していた。 「あぁ、はいはい」 と、適当に返事をして、ひっくり返すと表面が焼け過ぎていたが そんなことはどうでもいい雰囲気で話しは続いている。
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