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「兄ちゃん、兄ちゃん、どこまで行くが?」
墓ばかりが立ち並ぶ、険しい山道を兄のシジマが登っていく。
「兄ちゃん、そっちは危ないがよ、なんで行くが?」
兄は立ち止まった。
夏草が高く伸びているせいでわかりにくいが、その先は
崖になっている。
「ミカゲ、おまえ、こしくれ直せ」
と、兄が言ってきた。
俺はTシャツも短パンもサンダルも泥だらけになっていたが
兄はTシャツもジーンズもスニーカーも、返り血を受けていた。
ふもとの村では、消防車と救急車のサイレンが交互に鳴いている。
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