怨霊と家系の闘い

2/37

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
次の瞬間、女性がぐにゃりと身体をよじらせて歩道に倒れた。 頭が割れて血だまりをつくりながら。 同時に上から発狂するような声が響いてきた。 「工事中の作業員が建物の足場から工具を落とし、 それが女性の頭部に命中した。もちろん女性は即死。 そして工具を落とした若い作業員の人生も、おしまい」 実況のように、説明のように、兄が言った。 「兄ちゃん、相変わらず口が悪いな」 先程まで俺に『上からくるぞ』と、言い続けていた少年。 それが兄だ。 死んだ兄が幽体のままで存在していて、いつも俺のそばにいる。 そして事件を予知すると俺に警告してくるのだ。 女性のそばには確かに、血で濡れた銀色の大型の工具が落ちていた。 上でも下でも悲鳴と叫びが響き合うなかで。 俺は静かに歩いて立ち去った。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加