ブリンバンバン、ブリンバンバン

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ブリンバンバン、ブリンバンバン

「ブリンバンバン、ブリンバンバン、ブリンバンバン」 妻が歌っている。 「ブリンバンバン、ブリンバンバン、ブリンバンバン」 「ブリンバンバン、ブリンバンバン、ブリンバンバン」 そのとき私はこう思っている。 ――「ボーン」つけろやーーー!! みなさん、何のことか分かるだろう。 有名な歌のサビだ。 Bling-bang-bang, bling-bang-bang, bling-bang-bang-born しかたないから、私はせめてもの抵抗をする。 妻:「ブリンバンバン、ブリンバンバン、ブリンバンバン」 私:「ボーン」 妻:「ブリンバンバン、ブリンバンバン、ブリンバンバン」 私:「ボーン」 しつこく「ボーン」を言わない妻。 私は説明することにした。 「なあ、それ、最後に『ボーン』て付くねん。知ってる?」 「そんなん、知らんわ。何情報?」 私に指摘されてイラっとする妻。 口で説明するよりも、実際に歌を聞かせた方がいい。 私はプレイリストを再生した。 「ほら、もうすぐ来るで」 『Bling-bang-bang, bling-bang-bang, bling-bang-bang-born』 「ほらな、最後に『ボーン』て言うてるやろ?」 「そんなん、言うてないで。あんたの空耳やろ」 絶対に「ボーン」が聞こえているはずなのに、間違いを認めたくない妻。 こうなったら、文字で見せよう。 私はスマホに表示されている歌詞を妻に見せた。 『Bling-bang-bang, bling-bang-bang, bling-bang-bang-born』 「ほらな?」 「『born』て書いてるだけで、言うてないかもしらんやろ。それ、絶対にサイレント『born』やわ」 ――サイレント『born』ってなんやねん? Climbのmを発音しないみたいなもんか? それとも、X JAPANのサイレントジェラシーみたいなことなのか? 妻は自論を展開しはじめた。 「例えば、『international』ってあるやん。あれ、アメリカ人が言ったら?」と逆に私に質問する妻。 「イナナショナル」 ※アメリカ人はtを発音しません。 「『internet』をアメリカ人が言ったら?」 「イナネット」 ※同じくアメリカ人はtを発音しません。 「じゃあ、『bling-bang-bang-born』をアメリカ人が言ったら?」 ほー、そう来ましたか。 「bling-bang-bang-bornや!」 「違うわー。あれはサイレント『born』やから『bling-bang-bang』やねん」 「噓つけーーー!」 うちの妻は強情である。 私の言うことは何一つ聞かない。 *** さて、YouTubeに話を移そう。 私の妻は書道動画をYouTubeに投稿している自称ユーチューバーだ。そして、私は妻のアシスタントとして、妻の書く動画を撮影、編集、YouTubeに投稿している。 2月に再生回数が落ちてから、我が家はTikTokを始めた。 TikTokはバズらないものの、安定的に再生回数が1,000回くらい稼げる。 そして、TikTokは投稿する時に流行りの音楽を挿入することができる。 だから、妻は動画に『Bling-Bang-Bang-Born』を入れようとして、流れてくる音楽を歌っていたのだ。 TikTokを投稿していると毎日フォロワーが増えていく。 しかし、我が家のフォロワーはほぼ詐欺アカウントだ。 メッセージボックスには『一人で寂しいです。私とセックスしてくれませんか?』というメッセージが1日に数十件届く。X(旧Twitter)のフォロワーも同じような感じ。 フォロワーの9割が詐欺アカウント。 もし、TikTokを普通に使っていたら、詐欺メッセージに混ざって、友人からのメッセージも届くはずだ。 若い子はメッセージをチェックしているのだろうか? そこまでして、繋がりが必要なのだろうか? オジサンとしては不思議でしかたがない。 というわけで、うちの自称ユーチューバーは自称ティックトッカ―としても活動していくのであった。 <つづく>
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