後編

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ごめん、と謝って。そうして絆理の前から姿を消せばいい。絆理の前から消えてしまえば、彼を不快に思わせることも無くなるだろう。 そう思った次の瞬間、俺の身体にドンッと体当たりしてきた絆理にぎゅうと抱きしめられた。 「一生(いっせい)っ。一生(いっせい)っ。ありがとうっ。これで俺たちパートナーだな。一生大事にするっ。ずっと一緒だ。」 体当たりに思わずよろけた身体をそれでも離さず、絆理はさらに俺を胸元に抱き込んだ。 「へっ?えっ?」 「ああ、嬉しくてしょうがない。いつ持っていく?今日か?ってパートナーシップ制度ってのは婚姻届けと違って時間が決まってるから無理か。一刻も早くお前とパートナーになりたいのに。」 「え、え?」 「何驚いてるんだよ。ああ、何でそんな事知っているのかって。いや、俺もついさっき聞いた。役所の時間外受付ってとこでさ。色々教えてくれたぞ。」 「は、はぁ?」 「パートナーシップ制度は自治体によって申請方法が違ったりするみたいでさ。あ、そう言えば必要書類、まだあったかも知れない。なんだよ、今すぐってのは無理ってことか。」 「ば、絆理?ね、ちょ、ちょっと、絆理ってば。」 「はぁ、やっぱり会社を休んで一気に手続きした方がいいか。手間かかってもチマチマするより絶対良い。」 まくし立てる絆理の腕の中で俺は俺でプチパニック。 あれ?絆理、書類見たんだよな。なのに何で何も変わらないの? 気付いてないってこと?。まさかっ! 「絆理っ。ねぇ、書類っ。書類見たんだよな?何か気付かなかったのか?」 「え?ん~、ああ!一生(いっせい)の字、割と綺麗だなって。何か習ってた?」 「習ってなんかないけど……。あ、あとは?あとは何かない?」 「何かってなんだよ。特に思った事はないよ。あ、でもまだ書いてないけど一生(いっせい)の隣に俺の名前を書き入れるのかぁと思ったらゾクゾクしたし。隣り合った2つの名前を見たら嬉しくて舞い上がりそうだな、って妄想はしたけど。」 真剣な表情でそう話す絆理の様子に、誤魔化したり揶揄ったりしている様子はなくて、俺は途方に暮れる。
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