翔べない鳥は水面を跳ぶ

1/12
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 鴨にだって、死にたいと思うときは有るのか、無いのか。  カップルか、()しくは夫婦か。二羽の真鴨が川流に身を委ねる様子を、僕は河川敷から見守っていた。  一見呑気そうな鴨達だけど、普段は「猛禽類に喰われてしまいたい」と嘆いているのだろうか。  ……僕が僕の疑問に回答すると、答えはノー。  弱肉強食の自然界に()いて、日常とはデッド・オア・アライブ。常に死と隣り合わせの毎日だからこそ、人生(鳥生?)を目一杯生きられるのかもしれない。  一方の僕はどうだ。テストや部活のあれこれで「死にたい」と嘆くことの出来る日々は、永久的だと勘違いしていたのではないか。  テスト三日前に「勉強しないと!」と気付き、焦燥感に追われるように。当たり前の日々の大切さを、今更知ってしまった。     僕の住む街で戦争が始まるまで、あと二日。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!