一章〜守護師への道のり

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「いざ指示してくれって言われたらさ、あたしなんも言えなかった。なんも指示出来なかった。何でかって、もの凄い量の情報から自分が処理して判断しなきゃいけない。んでその凄い量の情報だって全く正反対の事が書かれていたりしてその良し悪しも自分で判断しなきゃいけないの。そんな中でお父さんは本当に色々考えてくれていたんだったって思ったら…お父さんの気持ち考えたらもうあたし…死にたくなったよね。」 母親はそう言うと鼻をすすり目頭を押さえた。 「酷い…酷いね…。」 紗耶虎はそれしか言えなかった。 元々賢いいつもの紗耶虎ならばあれやこれやと母親に言うのだが、しおらしい母親に対して何も言えなくなったといったところだろう。 「だからね?何もネットに書いてあるから正しい、ネットに書いてあるから間違いって決めつけるのは違うよ。だからネットがこうやって発達してもね、最後は自分の頭脳なんだよ。」 「じゃあ私はおかしくないってこと…?」 紗耶虎の肩の力が抜けていく。 「分からない。あたしは判断できないわよ。ただ、紗耶虎がそうやってネットの情報をあまりにも信じ過ぎているような気がしたから言っただけ。だからそれで全てを判断したら駄目ってこと。」 「そう…。」 紗耶虎はもう一段階肩の力が抜けた。 「ご馳走様でした。ごめん、お母さん、ちょっと私も適当だったかも…。」 紗耶虎はさっと席を立ち、食べ終えた食器をシンクに運んだ。 そして母親の方を見ずに自分の部屋へと戻った。 紗耶虎の部屋は実に簡素な作りだ。 六畳ほどの部屋に参考書がどっさりと乗った簡単な作りの小さな机、鉄製の柵の無い質素なベッドとみちみちに本で満たされた本棚があるだけだ。 「ふぅ…暑っ…」 紗耶虎はエアコンの電源を入れてベッドに腰を下ろした。 「違うんだよ…お母さん…そういう事じゃないんだよなぁ…。これ異常だよ、ホントに…。ありえない、ありえないよ。」 紗耶虎は汗ばんだ首を右の手のひらで一拭いし、その手をそのままへその前を通過し半ズボンの中にずぼっと入れて数回弄った。 紗耶虎は肩をすぼめて快感とも不快とも取れるようなしかめっ面を二度繰り返した後、半ズボンからその手を出した。 「ハァハァ…こ、こんなの無いよ…本当に私おかしくなったの…?どうしよう…こんなのあんまりだよ…いや…いやだ…こんなの嫌だ!!」 紗耶虎は半ズボンから出した人差し指と中指が糸を引いているのを見て、全てを失ったように脱力してベッドに仰向けに倒れ込んだ。
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