一章〜守護師への道のり

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一章〜守護師への道のり

「凄い今さらなんだけどちょっと聞きたいのよね、二人に。」 夏休み真っ只中の8月中旬の夜、蒸し暑いダイニングキッチンで家族三人で夕食を取っている時に中学校三年生の沖田紗耶虎(オキタサヤコ)は切り出した。 キャミソール一枚と下は半ズボンを履いていて、美しく長い黒髪直毛を後ろで一本に結いている。 紗耶虎は隣に座る母親と、向かい座る父親の顔を交互に見た。 「んん?凄い今さらってなんだぁ?どうしたんだ急に。いっやぁ…しっかし暑いね。母さん、も少しだけエアコン強めてくれる?」 父親は缶ビールを飲みながら言った。 頭髪は年甲斐もなく茶髪混じりの角刈りのような髪型で、顎髭を生やしている。 真夏の外作業で真っ黒に日焼けしていて、 目はギョロッと大きく、薄い唇に横に長い口、そして肉体労働の賜物か、薄手でグレーのTシャツから伸びる両腕はこれでもかと言うほどの筋肉を携えている。 身長もかなり高く、いかつい感じだが優しい話し方で仕草もどこか上品だ。 「んじゃもう少し強くしようか。確かに暑いね。」 母親は食事を中断し、近くに置いてあったエアコンのリモコンのボタンを何度か押して設定温度を下げた。 母親も茶髪混じりの長髪だ。 いわゆる薄幸顔だがかなり美人で、背もすらりと高い上に、足も長い。 まるでモデルような容姿だ。 「ねぇ聞いてよォ。ちゃんと聞いて、二人とも。」 紗耶虎はぷぅと頬を膨らませた。 「何だよ、ちゃんと聞いてるよ。」 父親は夕食のおかずを箸でつまみながら言った。 「あたしも聞いてるよ。今エアコンしてただけじゃないのよ。で?何よ。」 母親も困った顔をして答えた。 「うん、あの本当に今さらなんだけど私の名前ってサヤコじゃない?」 「そりゃそうだ。ホント今さらだな。でも良い名前だろ?ん?」 父親はビールを飲みながらにやりとした。 「うん。私も自分の名前は好きよ?」 紗耶虎の返答に父親は満足そうに頷いた。 「自分の名前が好きって幸せなことだと思うのよ。でも一つだけ気になってね?それを聞こうと思ってたの。」 「何よ何よ。何なの?」 父親は満足そうだが、母親は何を言い出すのか心配といった表情だ。 「サヤコの、コ。これが何で虎なのかなって。」 父親と母親は紗耶虎の質問に顔を見合わせてほんの一瞬顔を曇らせたが、すぐに二人ともプーと吹き出して笑い始めた。 「フフフ…紗耶虎、お前…何を改まって言い出すかと思ったら、そんな事かよ。ハハハ!」 父親は一しきり笑い終えると、ハアハアと息を切らしながら缶ビールを一気に飲み干した。 「まったくもぅ…そんな事ォ?ウフフフ!真剣な顔で何なのよもう。アハハハ!」 母親も大笑いだ。 だが紗耶虎は気が付いた。 元々地頭が良い方であり、観察眼が優れている紗耶虎は母親が笑うのを見て何かが違う事に気が付いた。 『ふぅん、やっぱり何かありそうだな。』
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