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これからも一緒に
マンションの床には、タブレットがいくつも転がっていた。彼のことを調べたらしい。
「僕らも協力したんだよ!
前脚が足りないから音声操作したんだ」
「探偵みたいで面白かったな」
「ベロ、ケルもありがとう」
私はじん、ときた。
「まったく、ろくでもない男だったわね」
「私のかわいい加奈子ちゃんはあんな奴にはもったいないわよ」
先輩とスーさんは、私以上に怒ってくれている。
「先輩、もしかしてこのためにお休みを?」
「まさか。用事のついでよ」
顔をそらす先輩の耳が赤い。ケルベロスは三頭ともにやにやしている。
私はほっこりした気持ちを胸に、エコバッグを取り出した。途中でスーパーに寄ったのだ。今夜はスーさんのリクエスト。
「では、これからパンケーキを焼きます!」
いええい、と歓声が上がる。
「ケーキと言えば、僕クリスマスも楽しみなんだよねー」
「パーティしたいな」
「私、ブッシュ・ド・ノエルも作れますよ」
「みんなでデコるのも楽しそうね」
「音楽はどうしようかしら……サックスかバイオリンか……」
私が作るのを見ながら、皆が話し合う。
そうそう人には言えない副業だけど。
クリスマスデートする彼氏もいないけれど。
好きなお菓子を作って、喜んでくれて、こんなに胸があたたかくなる。
先輩とケルベロスと過ごして、心から幸せだと思った。
パンケーキの焼けるにおいに包まれて、私たちの十二月の夜は更けていくのだった。
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