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「どうして……」
「返事が来ないから、会いに来ちゃった」
彼は照れくさそうに笑う。
「もうすぐクリスマスだろ?
最近、加奈子と過ごしたクリスマスを思い出すんだ。
ケーキも作ってくれて、あったかい幸せなクリスマスだったな、って思ったらいてもたってもいられなくて」
「だって、好きな人ができたって……」
私の声が震える。
「うん、付き合ったんだけど、すげーワガママで。結婚するならやっぱり加奈子みたいに堅実な子がいいよね」
「結婚」という言葉に、私はぐらりときた。
「失ってわかった。僕には加奈子しかいない。
もう一度、付き合ってくれないか?」
彼が手を差し出す。
ふらふらとその手をとろうとしたけれど。
「待った!」
後ろから声がかかった。
「――その言葉、本当に加奈子ちゃんだけに言っていたらよかったのにね」
「先輩!」
先輩は白い犬を連れている。見た目はまっとうな犬だ。頭も一つしかない。
だけど、もしかしてこの犬は……。
ぐっ、と肩をつかまれた。彼だ。
「誰ですかあなた、関係ないでしょ」
「この子の会社の先輩です。それはさておき、元カレさん。
もうネタはあがってるのよ」
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