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「やっほー加奈子ちゃん」
土曜日の夜、私は高級タワマン前で先輩と待ち合わせた。
「寒いし中入ろっか」
先輩は平然とタワマン内に入っていく。
「私みたいな庶民が入ったら捕まったりしません?」
「しないしない」
恐る恐る後に続く。
広いエントランス。頭上にはシャンデリアが輝き、クリスマスツリーの横にホテルのフロントのようなところがあった。綺麗な女性に会釈される。
「あの方は」
「コンシェルジュよ」
私は小さく「ひっ」と言って、ボロアパートに住む我が身との差を思った。
エレベーターに乗り込む。先輩がカードをかざすと50階のボタンが光る。
私はリュックを背負いなおした。
中にはマドレーヌが入っている。「お菓子が好きな人が多い職場なの。材料費払うからお願い」とリクエストされていたのだ。
ドキドキだけど、お菓子好きが多いなら大丈夫だろう。
今日も作っていて楽しかった。甘い香り、可愛いフォルム。やっぱりお菓子は良い。
「そういえば先輩、犬が好きか聞きましたけど、職場で犬を飼っているんです?」
「んー、まあそんなところね」
曖昧な返事に首をかしげたところで、エレベーターが到着した。
先輩はさっと降りて、最寄りの部屋のインターホンを押す。
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