副業

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 マドレーヌをお皿に盛りつける。  先輩が真っ白なキッチンでお湯をわかし、紅茶を淹れる。  そわそわしていると「座ってて」と言われた。示された先には白いじゅうたん、その上にローテーブル。すでにケルベロスがくつろいでいる。私は少し間を開けて座ったけど、つんつん、と脚で押された。 「俺、マドレーヌ好きなんだ。ありがとう」 「ど、どういたしまして」  声でわかった。今のはケルだ。  トレイが運ばれてきた。 「さぁ、ティータイムよ」  ケルベロスには、それぞれトレイの上にマドレーヌ、そしてお皿に紅茶。  いいにおいが漂う中、先輩がスイッチを押し、ロールスクリーンがいっせいに上がる。 「わぁ……!」  窓の外には東京の夜景。  部屋には、ケルベロスと先輩と私。非日常もいいところだけど、もう夢だと思って楽しもう。 「それじゃ」 「いっただきまーす!」 「カナコ、ありがとね」  さっそく食べようとしたけど。 「あっ、待って!」  私は声をあげ、一同にきょとんと見つめられた。 「私、普通に人間用で作ってきたんですけど……ワンちゃんにはダメなんじゃ」  犬は人と同じものを食べてはいけない、と聞いたことがある。 「大丈夫、俺たち魔物だから。なんでも食べられるよ」とケルが答えた。 「そんなもんなんですか」  肩の力が抜ける。 「おいしいよ、これ」とベロが口をもぐもぐさせながら言って、「食べ終わってからしゃべりなさい」とスーさんにたしなめられていた。
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