アラサーぼっちと保護犬ロン

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 動物愛護センターに到着して、俺たちは再び面談をしたときと同じ、第二多目的室に通される。長机二つに椅子が四脚、窓際にケージに囲まれた空間があるのも、以前と変わりない。  一度訪れたことがあるからと言って、気は少しも楽にならず、俺は自然と緊張してしまう。俺が中心になって話すわけではないのに。  ロンをキャリーバッグからケージの中に出して、俺たちと木和田は向かい合って座った。  ロンは不安なのか、あちこちに視線を動かしている。その視線の前に、俺は嘘をついたり本心を偽ったりすることは許されないと感じた。  簡単に挨拶を済ませてから、俺たちと木和田の最終面談は始まった。  木和田はまずはトライアル期間のロンの様子を訊いてくる。車内でも話題に上ったことだが、質問にはより正式に訊こうという意味合いが強くて、俺たちは母さんを中心に、ありのままについて話すしかない。  良いことだけでなく、家に最後まで完全には慣れてくれなかったことや、俺たち以外の来客に向かって吠えってしまったことなど、あまり良いとは言えないことまで正直に伝える。片方の側面だけ話すのは、木和田にもロンにも不誠実な気が、少なくとも俺にはしたからだ。  木和田も時折メモを取りながら、俺たちの話に耳を傾けている。まだ審査されている感覚に、俺はかすかに胃が痛んだ。
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