アラサーぼっちと保護犬ロン

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 死刑になりたい。人に首を吊らせてもらって、執行のボタンを押されて、一思いに逝きたい。  俺はそう明るい部屋の真ん中で思う。  俺には何もない。仕事は最低賃金でしていないようなものだし、親しい友人はおろか、話を聞いてくれる人も親以外には存在していない。ただ漫画を読んだり、アニメを見たりして時間を潰す無用の長物だ。  俺にはやりたいことなんてない。もし誰かが突然一億円をくれたとしても、使い道が少しも思い浮かばない。漫画やアニメだって、人に語れるほど好きなわけじゃない。ただ何も起こらない日常をダラダラと過ごす、肉のくずだ。  二九歳になっても彼女はおろか、そういう経験をしたこともない。さらにチビでブスで頭の悪いコミュ障だから、まったく救いようがない。  きっと誰もが俺の生活を見たら、こう思うだろう。 「生きていて楽しいの?」  それに対する俺の答えはNOだ。こんな何の生産性もない人生、楽しいはずがない。  俺には生きている意味なんてないのだ。いや、きっと生まれたときから、俺の人生には価値なんて一かけらもなかったのだ。  このまま生きていても、ぼんやりと苦しく辛い思いをするだけ。だったら、いつ死んでも何も変わらない。  いや、このまま生きていても両親や周囲の人間に迷惑をかけるだけだから、本当は今すぐにでも死ぬべきなのだろう。俺は生きているだけで罪だから、死という極刑がふさわしいのだ。
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