アラサーぼっちと保護犬ロン

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 俺たちは保護犬だけでなく、様々な保護猫も見て回った。 「猫もいいかもしれないね」と言っている両親に、俺は微笑みながらも内心では軽く鼻白んでしまう。ペットショップと同じテンションで来たのかと言いたくなったけれど、言わなかった。保護犬・保護猫を迎えることに前向きになっている両親の気持ちを削ぎたくはなかった。  一通り紹介された保護犬・保護猫を確認して、俺たちは譲渡会場の外、休憩スペースに用意された椅子に腰を下ろす。参加者の話し声がめいめいに聞こえてくる中で、まず口を開いたのは母さんだった。 「いやー、凄い賑わってたね。保護犬も保護猫のところにもたくさん人がいて。こんなにたくさんの人が来るなんて思ってもみなかった」 「そうだな。もっとゆっくりじっくり保護犬や保護猫たちを見て回りたかったよな。もし迎え入れるんなら、これから先何年も一緒に過ごすことになるんだから」 「でも、それだけ保護犬や保護猫に関心が高まってるのは良いことじゃない? 別に私たちじゃなくても、誰かが迎え入れることで、救える命が確実にあるわけだし」 「ああ。だいぶ減ってきてるとはいえ、まだそういうことになる保護犬や保護猫はゼロじゃないからな。こういう譲渡会みたいな試みは、これからもなされていくべきだと思う」  譲渡会の意義について確認し合った二人は、それからどの保護犬や保護猫を迎え入れるべきか話し合っていた。  あの子がいい、この子がいいという会話に俺は上手く口を挟めない。まるでファミレスでメニューを選ぶかのような気軽さに、心の中ではぽかんと口を開けてしまう。  真剣に考えすぎて、自分たちには保護犬や保護猫は飼えないというネガティブな思考に陥るのは良いことではないし、迎え入れることで助かる命もあるかもしれないのだ。  それでも、俺は二人にもう少し慎重になるべきだろうと感じてしまう。二人とも誰かは必ず迎え入れるという前提で話していて、まず飼うかどうかから話し合いをスタートさせるべきなのではと感じてしまう。  でも、口は挟まない。保護犬や保護猫を飼いたがっているのは、紛れもなくこの二人なのだ。
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