アラサーぼっちと保護犬ロン

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 保護団体のスタッフから俺たちのもとに連絡が入ったのは、譲渡会が終わってから三日後のことだった。  条件が合致したので、一度お話する機会を設けたい。そう連絡を受けたとき、母さんはひとまず最初の関門が突破できたことに、嬉しそうな顔をしていた。  とはいえ、まだロンを迎え入られると決まったわけではないから、俺の気は緩まない。面談次第では、飼うことを断られる可能性もあり得るのだ。  母さんもそのことを分かっていたから、すぐに引き締まった表情に変わっていて、何としてもロンを迎え入れたいと思っていることが、俺には感じ取れた。  母さんが中心となって、ロンを飼うための準備をしたり、保護犬についての情報収集をしていたりすると、時間はあっという間に過ぎ、面談当日の日曜日になる。  俺たちがソワソワしながら待つ中、そのスタッフは約束の一〇時より少し前に、俺たちの家へとやってきた。譲渡会でもロンの側にいた男性のスタッフで、ポロシャツの胸ポケットに、「木和田(きわだ)」と書かれたネームプレートが取り付けられている。 「今日はよろしくお願いします」と微笑む木和田に、俺たちもどうにか穏やかな表情で返事をする。  愛護センターでの面談に先駆けて、木和田が俺たちの家にやってきた理由。それは、ロンがどんな環境で飼育されるかをチェックするためだった。
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