アラサーぼっちと保護犬ロン

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 家に上がった木和田を、俺たちは主にロンを飼うことになるリビングに案内する。今日のために入念に掃除されたリビングには埃一つなく、また物を片づけたおかげでロンを飼えるだけの広いスペースが生まれていた。  揃えておいた犬用のベッドやケージ、トイレにシーツ、フードボウルや首輪にリードといった用品を木和田に見せる。木和田は部屋を見回しながら、持参していたタブレット端末を操作していて、審査されているという緊張が俺たちに募った。  主に母さんに完全室内飼育はできるかや、動物病院がどこにあるか把握しているかなど、いくつかの質問を投げかける木和田。でも、それはインターネットで事前に調べられた範囲内のものだったので、俺たちはつかえることなく答えられる。  ペットを飼うのは初めてだけれど、飼育環境に不備はないと俺たちは信じたかった。  木和田による飼育環境のチェックは、三〇分ほどで終わった。  判定結果は明かされず、俺たちは次の面談に向けて、木和田が運転する車に乗った。面談はここから車で一五分ほどのところにある、動物愛護センターで行われることになっていた。  軽く二言三言交わしたくらいで、会話は大きな盛り上がりを見せることもなく、俺たちは動物愛護センターに辿り着く。白い外壁の三階建ての建物は、入り口までの通路に動物たちの運動不足を解消するためだろう、芝生広場が設けられていた。  館内に入った俺たちは、一階の第二多目的室に通される。そこには長机が二脚並べられていて、それぞれの長辺に椅子が一つと三つ配置されていた。部屋の奥にはカーペットではない床材が敷かれた、ケージに囲まれた空間もある。 「どうぞお座りになって少々お待ちください」と言う木和田に、俺たちは素直に従った。部屋の外に出ていった木和田が戻ってくるまでの時間は、俺には何十分にも感じられた。
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