アラサーぼっちと保護犬ロン

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「分かりました。では、続いての質問ですが、ご職業は今はなさっていないということでよろしいですか?」  俺たちは記載内容について、一つずつ確認を受けていく。家族全員の同意を確認し、住居環境をもう一度確かめ、ペットの飼育経験がないことも正直に話した。  ロンを迎え入れたい理由を訊かれた母さんは、「犬を飼うなら保護犬と決めていた」と、もっともな理由を述べている。俺たちが口にした言葉に嘘は一つもなかった。全てアンケートに記載した通りだ。  木和田も納得してくれたようで、俺たちは具体的な話し合いに入る。転居の可能性はないか、散歩時間は取れるか、去勢手術を行うことには同意するか、譲渡後の保護団体からの連絡には応じられるか。迎え入れるにあたっての注意事項を、一つずつ確認していく。  俺たちは、その全てに同意すると答えた。木和田が提示する条件には妥当性があって、ロンのためにそうした方がいいことは分かりきっていた。  面談は少しずつ前向きな方向へと進んでいく。こちらを見てくるロンの前では、嘘なんてつけるはずもなかった。 「二枚さんの意志は確認できました。では、最後に私からロンくんがここにいる理由について、お話してもいいですか?」  そう尋ねてきた木和田に、俺たちの返事は頷く以外ありえない。何の理由もない犬がここにいるわけがないから、俺は内心で身構えた。
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