アラサーぼっちと保護犬ロン

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「それでも、二枚さんはロンくんを迎え入れたいと思いますか?」確認するように訊いてきた木和田に、俺はすぐに返事ができなかった。  いくら俺たちが可愛がったとしても、ロンにはいまいち伝わらないかもしれない。ロンが心を開いてくれるまで粘り強く接する。そんな根気が俺にあるかどうかは正直なところ、疑問が残る。保護犬を飼うということは、決して簡単なことではないと思い知らされた気分だ。  だけれど、いくら俺が迷っていても、当の母さんは違った。一瞬だけ間を置いてから、分かりきったような声を出す。 「はい。それでも私はロンくんを迎え入れたいです。もしかしたら、ペットを飼ったことがないからこその楽観的な見通しかもしれませんが、毎日優しく暖かく根気強く接していけば、きっとロンくんにも伝わるはずだと思っていますから」  母さんの言葉には確固たる意志が宿っていて、簡単に退く気はないようだった。今日の面談を経て「ロンを迎え入れたい」という決意を、より新たにしたのかもしれない。 「分かりました。私はそれだけお伝えしたかったので。では、本日の面談は以上になります。結果の方は、また後日改めてご連絡いたします。本日はお越しいただきありがとうございました」 「こちらこそありがとうございました」  俺たちが丁寧に礼を返すと、面談は終わりを告げた。  立ち上がって横を見ると、再びロンと目が合う。真円に近い双眸が、木和田の話を聞いた後では、どこか悲しさや寂しさを湛えているように見えた。
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