アラサーぼっちと保護犬ロン

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 だけれど、本当に恥ずかしくて情けない話だが、俺には自殺をする勇気がなかった。首吊り、服毒、練炭、焼身、刺傷、溺死。そのどれもが苦しそうで、身勝手な話だが気が引けてしまう。  分かっている。俺の人生、この先良いことなんて何一つない。  それでも、宝くじの一等が当たるようなわずかな確率だが、もしかしたら何か良いことがあるかもしれないと思ってしまう。  口を閉ざして、自分からは何一つ動こうとしないで、それでも何かを期待してしまうなんて、虫が良すぎるのは重々承知だ。俺の人生、お先真っ暗に決まっている。  だけれど、俺はそこにかすかな希望を見てしまうのだ。毎週買っている漫画雑誌や、放送されるアニメの続きを楽しみにしてしまっているのだ。  何の努力もしないで、苦痛を避け続けて、快楽をむさぼり続ける。人に何も与えられない人間が、生きていていいわけがない。  それが分かっていても、俺は自殺を選べないのだ。きっと世界一の意気地なしだろう。考えれば考えるほど、俺は生きていてはダメなのだ。  だから、自分で死ぬことができないなら、人に殺してもらうしかない。  でも、俺には殺してくれと頼めるような人間は両親を除いては周囲にはいなかったし、きっと両親はいくら頼んでも俺を殺してはくれないだろう。百歩譲って殺してくれたとしても、すぐに後を追いかねない。俺が死ぬのは一向に構わないけれど、両親は人から必要とされている人間だから、死んでもらっては困る。  偶然現れる通り魔に期待するのも天文学的確率だから、人を何人か殺して死刑になるのが、俺が確実に死ねる一番の近道だった。
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