アラサーぼっちと保護犬ロン

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 ロンが譲渡前のトライアルで俺たちのもとにやってきてから、初めての週末になった。でも、俺にはまだ一週間も経っていないとは思えないほどに、時間が過ぎるのが遅く感じられる。  それはきっと、ロンがまだ俺たちに懐いていないからだろう。母さんたちの終日にわたる世話にも関わらず、ロンはまだ俺たちに心を開いてはいなかった。  ちゃんとドッグフードは食べてくれるし、トイレに失敗して粗相をすることもなくなっている。散歩にも応じてくれるし、ほとんどの時間をケージの中で過ごしているから、飼うのに手間はあまりかかっていない。  だけれど、それがかえって俺には、まだ心を許されていないように感じられてしまう。戸惑いがまだ消えていないと思えてしまう。  日中は仕事に行っている俺ですらそう感じてしまうのだから、母さんたちが抱いているもどかしさはいかほどだろう。  気がつけば、二人がロンを気にする時間は、やってきた当初より少しだが減っていた。  その日は朝から雨が降り続く、生憎の天気だった。これでは散歩には行けるはずもない。  俺たちも特に用事がないので、朝起きてから今に至るまで、一歩も家の外に出ていない。ただ、つけっぱなしにしているテレビをたまに見ながら、漫然とした時間を過ごすだけ。何の生産性もない時間に、俺はかすかに焦りを覚えてしまうが、したいことも特に思い浮かばないので、どうしようもない。  ロンは今日もケージの中で、座り続けている。そうしていれば、誰にも文句を言われないというように。  その態度に俺は、もっと生き生きと過ごしてほしいと、少し胸が痛くなる。そして、それが俺に対しても言えることに気づいて、心の中で苦笑いを浮かべた。
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