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ロンは今どうしているだろうか。元気でいるだろうか。
ロンのトライアル期間も半分を過ぎて、俺は仕事中もそう考えるようになっていた。母さんや父さんが世話をしてくれているとはいえ、どうしても今はそばにいないロンのことが気になってしまう。早く仕事を終えて、ロンの顔が見たい。
この仕事は俺一人がいなくなっても、何の問題もなく回るだろう。だから、こんなところに縛りつけられていたくない。今すぐ帰って、ロンの姿を見て安心させてくれ。
そんな思いを抱きながら、俺は何の生産性もないカスみたいな仕事にじっと耐えていた。
五時に仕事を終えると、俺は脇目も振らずに駅へと急ぐ。混雑している電車に乗って、家の最寄り駅で降りると、空は暗くなって完全な夜になっていた。
家に辿り着いた俺はスーツから着替えることもせずに、真っ先にリビングに向かう。
すると、そこには自分のベッドですやすやと眠っているロンがいた。気持ちよく熟睡していて、声をかけたり頭を撫でたりは今はするべきではないと感じる。
だけれどそれと同時に、俺の目は気になる光景を捉えてしまう。ダイニングテーブルに、母さんが頭を抱えて座っていたのだ。ため息までついていて、何かあったのかと心配せずにはいられない。
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