アラサーぼっちと保護犬ロン

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 ドッグランでの一件があってからも、母さんたちはロンの世話をし続けていた。ドッグフードをあげて、ダニなどのアレルギーが発生しないように、こまめにシャワーも浴びさせる。  だけれど俺には、二人のロンに接する姿勢が少し変化しているように感じられる。純粋に可愛らしいというよりは、トライアル期間が終わるまでは面倒を見続けなければならないという使命感で動いているような。  実際、二人がロンに触れる機会は少なくなっている。それはまだこの家に慣れていないロンを思ってのことかもしれないが、俺にはロンの世話をすることに負荷を感じているように見えてしまう。  心ない言い方をすれば、もうロンと一緒にいることに飽きてしまったかのような。そんな雰囲気さえ、二人は漂わせつつあった。 「知佐、ちょっとロンを散歩させてきてくれない?」  仕事を終えて帰ってきた俺に、母さんが言う。昨日と何も変わらない口調で。 「こんな時間に? もう外暗いよ」 「うん。今日お母さんたち色々忙しくてさ。だから、ロンの散歩にはまだ行けてないんだ。だから、お願い。散歩、行ってきてくれないかな」  定年退職してずっと家にいるのに、何が忙しいだ。そう言って、昨日も俺に散歩させていただろ。  かすかに芽生えた反感を、俺はぐっと押しこめる。どのみちロンの散歩は誰かがしなければならないことだ。母さんたちが億劫に感じているなら、俺がするしかない。 「分かったよ」と、俺はソファから立ち上がる。夕食まではスマートフォンやテレビを見るくらいしかやることがなかったから、ちょうどいいと思うことにした。  ロンの首輪にリードをつけて、「いってきます」と玄関を出る。気温が下がり始めて、外は一枚羽織るものがないと寒いくらいだった。
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