アラサーぼっちと保護犬ロン

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 時間は矢のような速度で過ぎ去り、気がつけば土曜日になっていた。ロンのトライアル最終日だ。  その日を迎えるころには、ロンに食事を与えたりシャワーを浴びせたりするのは母さんたち、散歩をさせるのは俺という役割分担が出来上がっていた。ロンと散歩をするのは、俺にとっても心穏やかでいられる時間だったし、母さんたちだって、ロンの排泄物の処理を行ってくれている。だからとやかく言う理由は、俺にはないはずだった。  それでも、俺は胸に澱んで重なるものを感じてしまう。母さんたちは昼間、ロンを散歩させていない。それがどうしても、必要最低限の世話しかしたくないと言っているように、俺は感じてしまう。ロンを迎え入れたいと望んだのは、母さんたちのはずなのに。  ロンに声をかけたり、撫でたりする機会も減っていて、俺はロンから気持ちが離れつつあるのではないかと、邪推するようになっていた。  夜の一一時を過ぎて、俺たちはダイニングテーブルに集まって座っていた。母さんが「二人ともちょっといい?」と、俺と父さんを呼んだのだ。雰囲気からして気軽な雑談ではなさそうだったから、話題は俺にも察せられてしまう。  ロンは自分のベッドの上で、すやすやと眠っていた。何も知らないかのように。 「明日のことなんだけどさ」  形式的な会話は意味をなさないと判断したのだろう。母さんはさっそく本題を切り出した。  俺はかすかに息を呑む。トライアル期間が終わった明日は、俺たちは午前中から動物愛護センターに行って、ロンを正式に迎え入れるかどうかの、最終判断をすることになっていた。
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