アラサーぼっちと保護犬ロン

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「二人はどう思う? ロンとこのまま一緒にいたいと思う?」  単刀直入に訊いた母さんに、俺はかえって胸のうちを察してしまう。  家族全員の同意がなければ、ロンを迎え入れることはできない。でも、母さんの真意は、その最低条件とは別のところにあるように思われた。  頭の中を良くない想像が駆け巡る。打ち消すためにも、俺はかねて抱いていた思いを、言葉に載せて吐き出した。 「そりゃ、俺はロンと一緒にいたいよ。ロンだって少しずつだけどこの家にも慣れてきてるし、一緒に散歩するなかで愛着も湧いてきてるし。俺はロンを正式に家に迎え入れたい」  少しの誤解も生まないように、俺は明確な言葉を選んで使った。まだ俺たちに完全に心を開いているとは言い難いものの、それはこれからゆっくりと時間をかけて接していけばいい。少なくとも俺には、ロンを拒む理由は見当たらなかった。  なのに、父さんはすぐに俺の後に続かず、言葉を詰まらせてしまっている。煮え切らない態度に、俺はじれったくなった。 「俺は、正直分からない。このままここにいることが、ロンのためになるのかどうか。ペットを飼うこと自体初めての俺たちのもとにいて、ロンが幸せになれるかどうかは、情けないけど俺には言いきれないよ」  父さんの意見は予想できた通り、ロンを迎え入れることに、一〇〇パーセント同意はしていなかった。もしかしたら、自分たちの気持ちがなかなか通じないやりきれなさを感じているのかもしれない。  だとしたら、俺は安易にそれを否定できない。俺だって似たような思いを感じていないと言ったら、嘘になるからだ。  ロンと俺たちは、相性があまり良くないのではないか。そんな思いを、俺は未だに払拭できずにいた。
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