アラサーぼっちと保護犬ロン

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 思いの丈を伝える俺の態度は、二人からすれば必死に見えていたかもしれない。そこまで言うほどのことか、と。  でも、俺は二人にそう思われていても、まったく構わなかった。今の俺にはロンと一緒にいたいという考えしかない。それ以外の未来は考えたくないと思えるほど、俺はこの二週間でロンに気持ちを寄せていた。 「知佐がそこまで言ってくれること、私たちも嬉しいよ。ロンは知佐にとってすっかり大切な存在になったんだね」  そう言った母さんに、俺は態度が変わる兆しを見る。俺の訴えが届き始めているのかもしれない。 「……考え直してくれるの?」 「うん、簡単に結論づけることはできないけどね。でも、知佐の気持ちをまるっきり無視するのもどうかとは、今聞いてて思ったよ」 「それってつまり、ロンを正式に迎え入れるってこと?」 「約束はできないけどね。もっと色んな条件も考えて、その上でこのままロンを家で飼い続けるか決めるよ」   それは少し悠長ではないか。明日の午前中には決断を下さなければならないのに。  そう思う俺をよそに母さんは、「よし、じゃあもう遅いから寝よ」と話し合いを終わらせようとする。結論が先延ばしにされたことに、俺は少し引っかかるものを感じたが、気がつけば時計はもう夜の一二時を回っていた。  このまま無理に母さんたちを説得して、飼い続ける同意が取れたとしても、それでは後々にしこりが残りかねない。  だから、俺はむずかゆい思いを抱きながらも、母さんに同意して、ダイニングテーブルから立ち上がった。ロンを一目見て、自分の部屋がある二階に向かう。  ベッドに横になってみても、すぐに眠ることはできなかった。  明日母さんは、俺たちはどのような結論を下すのだろう。そう考えると、まったく気が気ではなかった。
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