アラサーぼっちと保護犬ロン

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 ロンとこれからも一緒にいられるか。結論が出ていない状態では眠りも浅くなって、俺は朝の六時には目を覚ましていた。二度寝をする気にもなれずに、リビングへと向かう。  照明をつけても、ロンはまだ眠ったままでいた。犬は人間よりも長く眠る動物だから、当然と言えば当然だろう。俺は寝ているロンを起こさないように、優しく見つめる。  俺の心配をよそに熟睡しているロンを見ると、俺には譲渡会で目にしてから今日まで、ロンと過ごした時間が思い起こされた。たった二週間だが、ロンがいた時間は俺の人生の中でも有数の、意味のある時間だったと言える。  ロンがこれからも家にいてくれることを、俺は静かに願ってやまなかった。  しばらくして母さんたちも起き出してきて、間もなくロンの目も覚める。朝食を食べながら、俺たちは少し話をしたけれど、母さんたちから決定的な言葉を聞き出すことはできなかった。まだ決めかねている途中なのだろうか。木和田が来るまで、もう時間はあまりないのに。  そんな俺たちの様子などどこ吹く風というように、ロンはゆっくりとドッグフードを口にしている。最初はなかなか寄りつかなかったのに、多少なりとも俺たちの家に慣れてくれたのだろうか。  ひたすらに食べ続けるロンに、俺たちは目を向けた。母さんたちも、俺と同じことを考えていてほしいと感じた。  木和田がやってきたのは、一〇時の数分前だった。玄関に入ってきて、「お久しぶりです」と俺たちに声をかける。その手には、ロンを連れてきたときと同じキャリーバッグが握られていた。  ロンにキャリーバッグに入ってもらい、俺たちは再び木和田の運転で動物愛護センターに向かう。車内の会話はやはり弾まなかった。 「二週間、どうでしたか?」と木和田に訊かれても、俺たちは通り一遍の答えしか返せなかった。
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