アラサーぼっちと保護犬ロン

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「では、二枚さん。改めてお訊きします。二週間のトライアル期間を経て、ロンくんを自分たちの家に、正式に迎え入れたいと思いましたか?」  木和田が改まったように訊いたから、多目的室の空気はより真剣さを帯びた。俺は顔を母さんの方に向ける。母さんの横顔には、もう迷っている様子は見られなかった。 「はい。私たちにはロンが必要です。どうか正式に迎え入れさせてください」  母さんはきっぱりと言った。単なる思いつきや仕方なしに言っているわけではないことは、口調から俺にも分かる。  だからこそ、俺は内心驚いてしまう。いったいいつ母さんは腹を決めたのだろう。 「二枚さん、念のため確認しますが、本当に大丈夫ですか? 来客に吠えてしまったりと、ロンくんの世話には手を焼いていらしたんですよね?」 「それは私たちがしっかりとしつけます。先輩の里親さんにアドバイスをもらいながら、どうやったらロンのためになるのかを考えて行動していきます。『安心していい』と今よりも伝えられたら、ロンもきっと家に慣れてくれるはずですし、私たちは責任を持って、ロンの世話をし続ける所存です」  念を押すように訊いてきた木和田にも、母さんの意志は揺らがなかった。毅然と顔を上げていて、完全に決心がついたのだと分かる。  木和田はさらに俺たち二人にもロンを迎え入れたいか訊いてきたけれど、俺にとっては首を縦に振る以外の選択肢はあり得ない。父さんも頷いてくれていて、俺たちの気持ちは、一つに固まっていた。  最低条件である家族全員の同意が取れていると判断したのか、木和田も「分かりました」と頷いている。それはまさに俺の願望が叶った瞬間だった。
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