アラサーぼっちと保護犬ロン

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「いやいや、年寄りの暇つぶしでペットを飼うのは違うでしょ。世話とか散歩とかどうするの? 今はいいかもしれないけど、父さんや母さんだって、万が一のことが起こらないとは言い切れないでしょ」 「別に暇つぶしじゃないよ。ちゃんと身体が動く限りは、最後まで責任をもって面倒を見るつもりだから。それに知佐も子供の頃は、よくペット飼いたいって言ってたでしょ?」 「何年前の話だよ。俺、今はそんなこと全然思ってないってのに」 「そう? 子供の頃は誕生日の度にせがまれて大変だったんだけどな」 「だから、それも昔の話だよ。別に二人で行ってくればいいじゃんか。譲渡会でも何でも」  俺の口調は図らずしも攻撃的になってしまう。腹を立てているわけではないが、「大人になったんだね」と母さんに言われているようで、少し不愉快ではあった。成人から九年が経って、俺はいつの間にかつまらない大人になってしまっていた。いや、ただ単につまらない子供が、そのままつまらない大人になっただけなのかもしれない。  母さんも無理に俺を誘おうとはせず、「そっか。じゃあ、お父さんと一緒に行ってくるね」と言う。その言葉にどこか仲間外れにされたようで、軽く気に障ってしまう。  俺だってもういい年なのだ。家に一人でいても何の問題もない。  でも、俺をよそに飼うならどんな犬や猫がいいか話している二人を見ると、俺はやはり疎外感を味わってしまう。  実家にいること以上に親離れができていないことに、俺は自分を責めた。同い年の奴らはもう立派に自立して、一人暮らしをしている。  そうできていない自分は、ダメ人間だと思った。死ねばいいのにと思った。
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