アラサーぼっちと保護犬ロン

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 エスカレーターに乗って地上に出ると、十数個も並ぶ改札が俺たちを迎えた。始めて来た駅の光景に、俺は少し面食らう。たまにネットニュースなどでこの駅の混雑ぶりが取り上げられることはあるが、実際来てみると高い天井に、どことなく海の香りが漂ってくる気配がした。  改札をくぐって出口を出ると、遠くに逆三角形が四つ並ぶ巨大な建物が見えた。テレビでも何度か見たその光景に、俺は本当にあるんだというバカみたいな感想を抱いてしまう。実際、多くの人々がそこに向かっている。  だけれど、今日俺たちが向かうのはその大規模展示場ではない。  俺たちは右側を向いて歩き出す。ガラス張りが特徴的で、超有名企業のロゴを冠した建物は、出口からでも見えていたから、迷う理由がなかった。  俺たちが到着したのは、開場する一〇分ほど前だったけれど、既に入り口の前には長蛇の列ができていた。二つに折り曲げられた列に、俺たちと同じく事前予約をしたであろう人々が並んでいる。  今日、この建物では保護犬と保護猫の譲渡会が開催される。でも、保護犬や保護猫に関心を寄せている人がこんなにも多いとは、俺には想像できなかった。もしかしたら入場制限がかかって、待ちぼうけを喰らうかもしれない。俺は最後尾に並びながら、そんなことを危惧していた。  暇だったから。両親が行くからそのついでに。それくらいの気持ちで来たはずなのに。
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