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飲みに行った帰りに、街灯に照らされた叶の顔に、真摯に訴える。
一回目の時と同様、叶は困ったように微笑むと、
「ごめん、まだそういうふうには考えられないの」
と頭を下げた。
「俺のどういうところが、無理なの? 叶に異性として見られるためには、どうすればいい?」
女々しくも食い下がった俺に、彼女はすまなそうな声音で告げた。
「方条は何にも悪くないの。私に問題があって……ううん、何でもない」
叶は、何か重大な打ち明け話を語るような雰囲気を醸し出したが、思い直したように首を振った。
「何か悩んでいるなら、いくらでも話してよ」と言いたい衝動をグッと堪える。彼女が話したがっていないのなら、促すような言動は控えておいた方が良い。性急すぎると思われても、困るし。
叶が抱える"問題"について話してもらったのは、その日から一週間ほど経ってからだった。その期間中俺は、彼女を悩ましている"問題"とは何かずっと考えていた。
珍しく叶から誘ってくれたので、これは大切な話があるのか、と緊張しながら、待ち合わせ場所の居酒屋に向かった。
完全個室の空間で、叶と向き合う。
ほろ酔い気分になったところで、叶が真剣な調子で切り出した。
それはまるで、拒絶されないかと怯える子どものようだった。
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