天使のような妻

4/14
67人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
 それから俺は、出来るだけ「良い男」と思ってもらえるように、いっそう叶に尽くした。  遊ぶ際には絶対に財布を出させないようにしたし、買い物中に叶が目で追っていたものは「買ってあげるよ」と言った。財布を出してレジに行こうとする俺を、叶はいいよ、悪いからと言って止めるのだが、俺がやりたくてやってることだから、と言われると「嬉しい、ありがとう!」と彼女の中で最高級の笑顔を見せてくれるのだった。  そんな日々を積み重ねていくうちに、次第に叶は俺と会うことに対して積極的になった。月一回のデート(俺は勝手にそう呼んでいた)が、ニ、三回の頻度になった。  稀に叶の方からご飯に誘ってくれた時は、もう有頂天になった。  遠出の誘いにも、乗ってくれるようになった。  叶はインドアな人間で、あまり遠いところには行きたがらなかった。「俺が運転するから」と言っても、なかなか首を縦には振らなかった。  しかし、努力が報われたのか、叶は俺との時間を全力で楽しんでくれて、態度も柔らかくなった。前まではどこかぎこちなさというか、遠慮みたいなものが拭えなかった。  心を開いてくれている、と思った俺は、再び告白してみた。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!