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盲従
叶は俺を許してくれた。
俺たちは再び一緒に暮らし始めた。
痛みを我慢して切り落とした甲斐があった。去勢したおかげで、人生を立て直すことができたんだ。
復縁が決まった翌日、叶が例の男を連れてきた。
叶の話によると、この男は体は男性だけれど心は女性、ということだった。
「この人は男の人が好きなの。女性に性欲を抱くことは全然なくて……だから私もただの女友達って感じで接していて。恋バナとかもめちゃくちゃするんだよ?」
「そうなんです。二人でホテルに入ったのも——ラブホ女子会って知ってます? あれをやってたんですよ」
叶の女友達も説明してくれた。その口調や仕草に、女性らしいところはまったく見当たらない。
しかし叶が「友達なの」という以上、それを信じないわけにはいかない。
俺はもう二度彼女を疑わないと決めたのだ。幸せを維持するためには、都合の悪いことには目を瞑り続けなければならない。
俺の理解を得た叶は、友達を家に連れてくるようになった。仕事から帰ってくると、男物の靴が玄関に並んでいることが頻繁にあった。
叶の友達はしょっちゅう変わり、最初のニヒリストっぽいイケメンは、ふっつりと姿を見せなくなってしまった。叶が連れてくる友達は、いずれも性自認が女性である男性だった。その様子に女性的なものが何一つない点も、最初の男と同様だった。
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