盲従

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 叶の友達は、家に泊まることもあった。その際彼らは毎回叶の部屋で一夜を明かした。  一度部屋のドアに耳をつけて中の様子を窺ったことがあったが、トラウマになりそうだったので中断した。以来、客人がある日の夜は、アルコールをしこたま飲んで、朝まで熟睡できるようにした。  そんな日々が三年ほど続いた頃、叶が生命保険に入ってくれないか、と言ってきた。  その生命保険は、降りた場合相当に高い金額が配偶者に与えられるようで、「万が一のために加入しておくべきだと思うの」という叶の言葉に俺は同意し、その保険に加入した。  こんなやり取りをする少し前から、叶には特に仲の良い友達が出来たらしく、週に一回はその友人が泊まっていった。俺がいる時でもそいつは幅を利かせていて、今ではどちらが家主なのかわからぬ有様だ。  二人の計画を、俺は察していた。わかっていてなお、逃げようとは思わない。  ただ俺は、俺を殺すのは叶であってほしい。最後に見るのは、彼女の顔が良いと思った。
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