天使のような妻

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天使のような妻

 俺は本当に幸せな結婚をした。  俺にこれほど素晴らしい妻ができるなんて、子どもの頃は想像すらしていなかった。  顔立ちははっきりいって十人並みだけど、俺にとっては世界で一番可愛い。  妻の(かなえ)とは、10年来の付き合いになる。  高校一年から三年までずっと同じクラスで、三年間付かず離れずの友達としてやっていたのだが、俺が東京の大学にいって、精神を病んでしまった時に、唯一残った友達が彼女だった。  それ以来、叶が俺の中で友達以上の存在になって、一生を添い遂げたいと思うまでに、時間はかからなかった。  「叶のこと好きなんだ。俺と付き合ってほしい」  心臓をバクバク言わせながら告白した俺に、彼女は困ったような表情を見せた。  「方条(ほうじょう)の気持ちは本当に嬉しい。こんな私のことを好きだなんて言ってくれて、本当にありがたいんだけど……ごめん。ちょっと……まだ方条のこと、そういう目で見れないんだ」  一言一言を絞り出すように発した彼女には、いたたまれない気配が溢れていた。  気持ちに答えられないことが辛くてたまらない、というようなその顔に、慌てて弁解する。
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