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「楓の考えすぎだよ。ちょっと寝不足なだけよ、気にしない気にしない」
「本当?」
彼女の疑いの眼差しがあたしを射る。
楓は白衣の天使に見初められている気がする。患者の心理を隅々まで理解して、安らぎを自然と満たすような、胃の中のマシュマロみたいだから。
彼女にその話をすると、灰色の瞳を輝かせて否定するのだ。
胃の中のマシュマロだなんて、褒められてる気になれないわ。
でも、胃の中で蕩けるマシュマロに見えるのだ。
じんわり、あとから効いてくる腰痛の薬より、甘くて暖かな胃酸の黄色い液体に包み込まれるマシュマロの方が素敵だ。
セリカは変わってるわ。
楓はその話をするといつもそう言ってクスクス微笑む。
変わっているのだろうか?
「セリカってはじめて見たときから変わってたものね」
「だから今更心配する必要ないの」
「それ以上詮索するのは今日はやめてあげるわ。言いたくなったら言いな」
「考えとく」
楓は呆れて浴場に行ってしまった。彼女は大浴場がお気に入りらしい。
あたしは一人のんびり風呂に入るのが好きなので、夜にお湯が沸くようにこれからバスタブに水を張る。
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