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◇
「早坂くん、この問題教えてもらえるかな?」
「俺も教えてほしい」
「分かった。じゃあ黒板使って教えるから、聞きたい人は前の席に座ってくれる?」
あの日心の中で誓ったことを守るべく、所謂優等生と言われるイメージを持たせることにした。
ありがたいことに容姿には恵まれていたから、勉強もスポーツも何でもこなせるように努力し、完璧な人物を目指した。
けれどそうなると、一方的に妬まれることもあるだろうからと、わざわざ底辺な会話にも合わせてきた。
俺に対して抱かれるイメージはそう思われるようにし向けた通りになり、把握している限りでは勝手なイメージを持たれることはなかった。
あの時から、中学でも今の高校でも。
けれど、自分が操作されないことが確実になった今、これ以上は何もする必要はなく、要は現状維持だけしていればいいわけで。
それはそれで退屈だと目の前で俺の説明を聞いているクラスメートを見てそんなことを思った。
「ここで求められた解を……」
俺の説明が余程分かりやすいのか目を輝かせている彼らは、きっと脳内に「やっぱり早坂くんって頭が良くて優しいよなぁ」という考えを浮かべていて、でもそれは本人らが自然とそう思ったわけでもなく俺が操作したもの。
だからと言って、彼らに何か影響を及ぼすかと言えばそんなことは決してない。
あの時から噂をされた彼のようになりたくはないと、俺の頭の中はそればかりだった。
そのせいでつまらなくなったのだろう。そう思ったところで俺が操作されることはないし、平和な日常しかやって来ないのだから。
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