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大切に大切に扱われて、私はずっと私になったアインの腕のなかでまどろんでいる。
幸せすぎて、涙があふれそうになるくらい。
でも実際は、涙は私の瞳から流れ落ちて、アインになった私の瞼を濡らしてゆくのだった。
なぜ泣くの? 何か、辛いの?
私はまた、彼の手をペロリと舐めた。
大丈夫だよと、励ますつもりで。
彼は、なぜかとても悲しそうな瞳をしている。
何とかしなくては、と焦った私は体を動かそうと思ったものの何だか重くて動けない。
それに抱っこされている私になったアインの身体が、暖かすぎて眠くなってきちゃうし。
こんなにずっと優しく撫でられていては、気持ちよすぎて体がふわふわしてくるよ。
もうひと眠りしちゃおうかな。
そう思って、アインの瞳を覗いて合図してみた。
私になった彼は、いいよ、とでも言うように、とびきり優しく微笑んだ。
それから、ありがとう、とその瞳が言ったように思えた。
いつもの雄弁な、アインの黒い大きな瞳と同じように。
それでとても安心して、また私は幸せな眠りへと再び堕ちていったのだった。
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