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腹ぺこタヌキのオー次郎は山を彷徨っていた。
「なにかうまいもんはないかなぁ」
食べ物をさがしているうちに人里近くまで来てしまった。
あちこちの家から良い匂いがする。
「もうがまんできへん」
オー次郎は電信柱や自動車の影に隠れて、数件の家の様子を窺った。
「どの家もおじいさんやお婆さんばかりだ」
しめしめ 一番年寄りで ぼけてて 人が良さそうなお婆さんをターゲットにしよう。
そう決めるとオー次郎は三番目の民家のお婆さんに目をつけた。
作戦はこうだ お婆さんの孫に化けて美味しいものをたらふく食うのさ。
オー次郎はポンと宙返りしてお婆さんの孫の姿に化けた。
さっそくオー次郎はお婆さんのドアをノックした。
「だれだいこんな夜更けに」
「オレオレ」
「オレじゃ誰だか分からないよ」
「オレオレ、オレお腹が空いているんだ」
「そういわれてもね」
「ばあちゃんの孫のオレだよ」
「あたしの孫かい!」
と同時にドアが開きました。
「おまえ少し顔が丸っこくなったな」
「成長期だもん」
「そうじゃな」
おばあさんは大喜びしてオー次郎ともしらずタヌキを家の中に案内しました。
さっそく囲炉裏に鍋をかけ水や出汁をいれると、
「オー次郎、おまえにプレゼントをあげよう」
おばあちゃんは目をつむったオー次郎の背後に回って手足をしばりあげてしまいました。
「ひどいよ」
「ひどいのはおまえだろう」
「ぼくなにも悪いことしてないのに」
「なにいってんの! 二年前におまえはわたしの串カツを盗み食いしたでしょう」
「うう、あれは本物のお孫さんだよ」
とうとうオー次郎はポンと宙返りしてタヌキの姿にもどりました。
「おまえもあたしを騙そうとしたんだね!」
「ぼくまだなにもしてませんよ」
「だいたい今時オレオレ詐欺なんて時代遅れなんだよ」
お婆さんはオー次郎を厳しく説教すると玄関をあけて遠くに蹴飛ばしてやりました。
おわり
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