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「西園、ちょっと」
朝礼が終わると同時に課長に呼ばれた。
人気のない階段踊り場に連れていかれてはじまるのは、想定どおりのお説教。
「なんで今朝、いつもの時間に起こしてくれなかったんだ!」
いきなり、壁ドンされた。
しかもその銀縁眼鏡の同じくらい、冷たい目で見下ろされて背筋がぞくりとする。
でも課長がご立腹なのは当たり前だ、時間厳守をいつも言っている自分が、遅刻ギリギリなんて。
「その、朝活していたら時間が……」
「朝活!?」
課長は、そんなものと自分へのモーニングコールのどっちが大事だ!?って勢いだ。
「早く起きたんで、余裕のできた時間で課長がオススメしてくれた本でも読もうかと……。
そしたら夢中になっちゃって、いつの間にか時間が」
はぁーっと大きなため息をつき、課長が壁ドン姿勢を解く。
「そんなに面白かったのか?」
「はい。
最初は固そうな本だと思ったんですが、読んでみたらこれが」
「なら、よかった」
ふっ、と課長が唇を緩ませる。
これで怒りはおさまったかな、と思ったものの。
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