柴犬の憂鬱

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柴犬の憂鬱

 我が名はエイキチ。今年で五歳になる本来ならノラの柴犬である。今は不本意ながら人に捕まり飼い犬に身を落として生活している。  野を気ままに駆け回りたいのだが致し方あるまい。それは許そう。   しかし、名前が気にいらないのだ。  何故にエイキチなのだ。  エドワードやロバートなどいかした名前があるだろうに和風な名前をつけおって腹が立つ。  野をかけた頃の我の字名であった芝山の狂犬が泣くと言うものだ。  それもこれもあれが悪い。ビーフササミジャーキー。  あれが我が魄にまとわりつきはなさぬのだ。  我はあの誘惑に勝つことは出来なかった。故に今もこうして飼い犬に身を落としている。  誠に憂鬱である。憂鬱であるが我はあれが欲しい。  ビーフササミジャーキー志向の一品を……。
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