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三人称です。
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男の子、玄は逃げる。わんこをつれて。ふと玄が疲れ、足を緩めた時、引きずられ気味だったわんこは紐を引っ張る。森の方へと進もうとするわんこに玄は尋ねる。「わんこどこに連れて行くの?」わんこは「ついてこい」の意思だけ伝えて引っ張る。
どこに行くか考えていなかった玄は、まあ逃げてるんだしどこに行ってもいいかとワンコが行こうとしていく方向へついていく。
わんこはどんどん進んでいく。玄がギリギリ通れるか通れないかの木と木の隙間、ごつごつとして、玄ぐらいの子かスポーツ選手ぐらいしか登れないであろう岩の階段。滑り落ちそうになりそうな急な坂。天然アスレチックを通り抜けたその先に、小さな清流があった。
汗が吹き出し暑そうな玄にわんこは先に口をつけて毒味をして水を飲むように促す。少し薄暗い峡谷と清流は、木の葉を通り過ぎた光を反射し、今はもう玄の住んでいる地域では野生で生えているのを見られないニホンタンポポが狂い咲きし、みずみずしいミツバとセリが生えていて、現実ではないほど美しい。美的センスをあいにく持ち合わせていない玄も美しいと感じてしまったほどだ。
そのそばの獣道を二人、いや一人と一匹が歩く。果てしなく続く美しさに呑まれながら進む彼らは、美しい絵画に出てくる登場人物のようだ。歩いているうちに薄暗くなってきたが、時間感覚などとうに薄れた玄は気づかない。それもそのはず、その清流いやもはや渓流は世にも珍しいヒカリゴケとアカリソウが生え、幻想的な明るさだ。元々暗い渓流は時間感覚をなくしてくる。蛍が一つ一つと増え始め求婚を始める。控えめにセミ、キリギリス、小鳥が歌を奏で始める。
ふとわんこの足が止まった。前が詰まって気づいた玄は前を見る。そこには滝があった。もう時刻は夜になっている。蛍の光が反射する水はキラキラと光り、夜なのに不思議な美しさだ。木々のひらけたところから覗けた空は満天の星空と天の川だった。玄は、家に帰ることなど忘れて美しさを堪能した。
わんこが語りかける。「ついてきて」助走をかけてわんこは滝に向かって飛び込む。一瞬のち大切な友人であるわんこがいなくなったのに気付いた玄は、半狂乱になりながらも後に続く。
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その頃、いつまで経っても帰ってこない息子を心配して母親が泣いていた。父親はなんてことしてくれんだと取材班に怒る。ルールを破ったことのない息子を心配し、警察に相談する両親。警察では50人体制で玄を探し始めた。
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