16人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「地球に指導者を置くのね。しかし誰を?」
菜々美が首をかしげる。
《この制度はのちの銀河政府とのコンタクトの前の、人類の導きのための措置である》
宇宙船からの音声はさらに続いた。
《地球人類の統治者として、ここにサヤンとフウを任命する》
「ええ!」
菜々美は驚いた。
フウも驚いたように宇宙船を見つめている。
「これから私たちは、この惑星の女王と王になるということですか?」
《その通り。では銀河政府との認証を始めよう》
一本の真っ赤な光の道が、宇宙船から中空に広がった。まるで空を渡るバージンロードだった。
「行きましょう、フウ。私はあなたとならやってゆけそう」
菜々美は微笑み、フウの手を取った。
「ああ。君となら地球統治も出来るだろう」
サヤンとフウは、花嫁と花婿のように寄り添い、赤い光の道の上を歩いてゆく。それを司は地面に倒れたまま、何も出来ずに見つめていた。
フウが穏やかな顔で菜々美を見つめ、彼女の手を握りしめた。
「いつだったか、チェリアーナ姫……。君を連れて逃げることが出来なくてすまなかった。願えるのなら、今度こそ君と添い遂げたい」
「フウ、私も……」
菜々美の心を温かい気持ちが満たしてゆこうとしていた。彼女の頬を瞳からこぼれたしずくが伝う。それは透明に輝く涙だった。菜々美はそれを手の甲でぬぐう。
「泣かないと決めていたのに」
少し困ったようにつぶやくと、フウが菜々美の肩に手を置いた。
「サヤン、泣いているのか。私が君を泣かせてしまったのか?」
「違うの、これは嬉しくて流す涙だもの。だからこれはいいの……」
真珠のように涙を光らせながら、菜々美は鮮やかに笑った。その横顔は誇り高く前を向いていた。
宇宙船が二人を待っている。空を渡る赤い光のバージンロードの上を、菜々美とフウは共に寄り添うように歩いていった。
(完)
最初のコメントを投稿しよう!