4・審判

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「地球に指導者を置くのね。しかし誰を?」  菜々美が首をかしげる。 《この制度はのちの銀河政府とのコンタクトの前の、人類の導きのための措置である》  宇宙船からの音声はさらに続いた。 《地球人類の統治者として、ここにサヤンとフウを任命する》 「ええ!」  菜々美は驚いた。  フウも驚いたように宇宙船を見つめている。 「これから私たちは、この惑星の女王と王になるということですか?」 《その通り。では銀河政府との認証を始めよう》  一本の真っ赤な光の道が、宇宙船から中空に広がった。まるで空を渡るバージンロードだった。 「行きましょう、フウ。私はあなたとならやってゆけそう」  菜々美は微笑み、フウの手を取った。 「ああ。君となら地球統治も出来るだろう」  サヤンとフウは、花嫁と花婿のように寄り添い、赤い光の道の上を歩いてゆく。それを司は地面に倒れたまま、何も出来ずに見つめていた。  フウが穏やかな顔で菜々美を見つめ、彼女の手を握りしめた。 「いつだったか、チェリアーナ姫……。君を連れて逃げることが出来なくてすまなかった。願えるのなら、今度こそ君と添い遂げたい」 「フウ、私も……」  菜々美の心を温かい気持ちが満たしてゆこうとしていた。彼女の頬を瞳からこぼれたしずくが伝う。それは透明に輝く涙だった。菜々美はそれを手の甲でぬぐう。 「泣かないと決めていたのに」  少し困ったようにつぶやくと、フウが菜々美の肩に手を置いた。 「サヤン、泣いているのか。私が君を泣かせてしまったのか?」 「違うの、これは嬉しくて流す涙だもの。だからこれはいいの……」  真珠のように涙を光らせながら、菜々美は鮮やかに笑った。その横顔は誇り高く前を向いていた。  宇宙船が二人を待っている。空を渡る赤い光のバージンロードの上を、菜々美とフウは共に寄り添うように歩いていった。 (完)
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