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菜々美はフウに駆け寄った。
「フウ!」
宇宙船はすぐそば、二十メートルほどの近くまで迫っていた。宇宙船からの光が周囲に溢れ、機械音声のような声が周囲に響いた。
《サヤンとフウ。我々の調査員よ。帰還をずいぶん待たせてしまったな。無事であるか》
「はい、二人ともここにいます」
菜々美はすでにサヤンとして返事をしていた。
「私たちは地球人類を滅ぼすより、存続を願います。我々はこの三千年間を、人類と共に過ごしました。まさに彼らと共に生きたのです」
菜々美は心の中で叫んでいた。私の中の私たち。チェリアーナ姫。ナブラ女王。どうか私に力を貸して──。
「人間として私たちは精一杯生きました。そのときに得た情報を、ここにデータとして入れてあります」
菜々美は、真珠の指輪をはめた左手を、宇宙船に向かって差し出した。
「受け取って下さい。私たちの、人間の三千年の記録です」
《フム。しばし情報をもとに銀河政府に問い合わせる、判断を待たれよ》
数秒後、宇宙船から返答が来た。
《銀河政府は、地球の人類を存続させることに決定した》
「良かった……。感謝します」
菜々美は安堵の息をついた。緊張を抜き、微笑んで隣のフウを見やると、彼もまた口に微笑みを浮かべていた。
《ただし、条件がある》
「条件?」
《人類の意識は未熟である。宇宙文明とのコンタクトは時期尚早だ。だがこのまま放っておくと人類は自滅する。よって、銀河政府側の統治者を、暫定的に地球に置くことにする》
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