1・菜々美

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 ふと、鏡に見知らぬ人が映ったことに、菜々美は気がついた。  銀の長い髪をした、細身の長身の青年だった。すらりとした白いスーツ姿で、鏡の中からこちらを見つめている。 「え? あなたは誰?」  椅子から半分立ち上がって、菜々美が背後を振り返った。 「見つけた、サヤン」  斜め後ろに見知らぬ青年が立っていて、穏やかな声で話しかけてきた。菜々美は驚いた。 「え? 私はサヤンではないわ。人違いじゃないかしら」 「私はフウだ。あなたが忘れても私は忘れない」 「何を言っているの? 私たち、どこかで会ったの?」 「ああ、何度もね」  フウと名乗る男は、懐かし気に菜々美を見て答えた。 「もうじき船が我々を迎えに来る」 「船?」 「もはや三千年の時が過ぎた。銀河の彼方からくるこの船を、私たちは待ちわびていた」 「どういうことなの?」   菜々美は面食らっていた。しかしフウと名乗る男は当然のように、控室から菜々美を連れ出そうとする。 「私とあなたが乗る船だ」 「あなたは新郎側の友人? ちょっとついてゆけないけど……」 「サヤン、私たちは遠い宇宙から来た地球の調査員だ。銀河政府は地球人とコンタクトを取るか否か、思案している。審判は我々調査員のデータしだいなんだ」 「待って、わけが分からないわ!」 「もう空に宇宙船が見え始めるだろう。時間がない」
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