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ふと、鏡に見知らぬ人が映ったことに、菜々美は気がついた。
銀の長い髪をした、細身の長身の青年だった。すらりとした白いスーツ姿で、鏡の中からこちらを見つめている。
「え? あなたは誰?」
椅子から半分立ち上がって、菜々美が背後を振り返った。
「見つけた、サヤン」
斜め後ろに見知らぬ青年が立っていて、穏やかな声で話しかけてきた。菜々美は驚いた。
「え? 私はサヤンではないわ。人違いじゃないかしら」
「私はフウだ。あなたが忘れても私は忘れない」
「何を言っているの? 私たち、どこかで会ったの?」
「ああ、何度もね」
フウと名乗る男は、懐かし気に菜々美を見て答えた。
「もうじき船が我々を迎えに来る」
「船?」
「もはや三千年の時が過ぎた。銀河の彼方からくるこの船を、私たちは待ちわびていた」
「どういうことなの?」
菜々美は面食らっていた。しかしフウと名乗る男は当然のように、控室から菜々美を連れ出そうとする。
「私とあなたが乗る船だ」
「あなたは新郎側の友人? ちょっとついてゆけないけど……」
「サヤン、私たちは遠い宇宙から来た地球の調査員だ。銀河政府は地球人とコンタクトを取るか否か、思案している。審判は我々調査員のデータしだいなんだ」
「待って、わけが分からないわ!」
「もう空に宇宙船が見え始めるだろう。時間がない」
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