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フウは床に片膝をつき、菜々美に指輪を差し出した。そのまなざしは刺すように真剣だ。指輪は金の輪に大粒の白い真珠がひとつ輝いている。
この指輪にも、目の前のフウにもどこか覚えがあることが、菜々美には不思議だった。
フウが真面目な口調で話しかける。
「サヤン、どうか受け取って欲しい。この指輪をはめてもらえれば全てが分かる」
「何を言っているの。そんな指輪、受け取れない」
そのとき菜々美のスマホが鳴った。彼女が取ると新郎の司からだ。菜々美は安堵した。
「司さん、遅いわ。いま不思議な人がここに来て──」
「菜々美、すまないが挙式は出来ない」
スマホから聞こえる司の声は沈んでいた。
「どういうこと。一体何があったの?」
「本当にすまない。今、そちらに向かっているところだ。詳しくは週刊誌を見てもらえれば分かるから」
そこで司からの連絡は途切れた。
「サヤン、もう行こう」
フウが立ち上がり、菜々美をせかす。
「ちょっと待って、週刊誌を買うよりネットの方が早いわ」
すぐにスマホを使って菜々美はネットを調べた。司のことは、すでに芸能界ニュースに取り上げられていた。
『スクープ! 人気アイドルゆりりんと極秘デートの相手は、モデルNANAMIのフィアンセだった!』
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