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ウェブに転載された記事の踊るような文字に、思わず目を疑う。司が人気絶頂のアイドルとデートをしたという。そのことが週刊誌にリークされていた。
「そんな……。どういうことなの、これは」
菜々美は自分の顔から、スーッと血の気が引くのが分かった。今まで美しく飾られていた世界が、足元から揺らいでゆくようだ。嫌な予感が的中してゆくことがつらい。
記事では丁寧にも、司が浮気相手に送ったメッセージまで暴露されている。
『NANAMIは美しくても孤高の女王でね。可愛げがまったくなくてさ。それに比べてゆりりんは愛嬌があって可愛いよね。大好きだよ』
その文面を読むのは、菜々美にとって胸を氷の刃で斬られるような痛みだった。悲しみで目に涙が浮かびそうになる。
孤高の女王、氷の美女。確かにモデル界ではそう言われてきた。でもそれは事務所と、菜々美の外見が作り上げたイメージであって、本当の自分とは違う。しかし、今更そんなことを言っても、誰が信じてくれるのだろう。
「司……。ひどい……」
菜々美は絶望的な思いで首を振った。
(弱気になるな! こんなゴシップに負けちゃダメ!)
そう心の中で自分を叱咤すると、震える手でスマホを握りしめて菜々美は歯を食いしばった。泣いちゃダメ、メイクが落ちて顔が汚れる。目の周りがギトギトになる。いやそれ以上に、記者たちは不幸に取り乱す菜々美を撮りたいのだ。
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