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2・チェリアーナ姫
* * *
銀髪の青年は手に細い黒チョークを持ち、紙に絵を描いていた。紙の上には、黒の単色で滑らかな線が引かれて、描かれているものの陰影を浮かび上がらせている。
彼が描いているのは今にも動き出しそうな、ドレスを纏ったみずみずしい少女だった。
彼の目の前の窓の傍には美貌の姫、菜々美ことチェリアーナがいた。石を組んで作られた窓の外には、高い空の下に広がる城下の町並みが見える。それらは春の光を浴びて、夢の中のように淡く輝いていた。
若いチェリアーナ姫の透明感のある美しさは、艶やかな果実のようだ。その魅力は顔だけではなく、しぐさや全身から花が咲くようにあふれ出ていた。
だが彼女は石の窓辺に手をかけ、退屈そうにため息をついていた。
「カミッロ、素描はまだかかるのかしら。もう動いてもいいんじゃなくて?」
カミッロと呼ばれた青年は紙から顔を上げることもなかった。背後に一本で結んだ銀髪が、さらりと肩の上に流れている。
「もう少し我慢してくださいませ。姫こそが、この都で一番の美貌との噂。私はその美しさをひとつも逃さずに、ここに描き留めたいのです」
「似たようなことを言う吟遊詩人がいたわ。でも、父が怒ってこの城から追い出してしまわれた」
姫は哀しげに笑った。
「肖像画が必要なのよ。わたくしが見たこともない相手に嫁ぐためにね。そのために選ばれた画家があなたってわけ」
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